ブランドを体現する

 

先日、大統領や王室などを顧客に持つ世界最古のシャツブランドとのお取引で、たった1本のネクタイを丁寧に対応してくださりお客様に届けてくださいました。

ある日、私がお客様の衣装を調達するために向かったラグジュアリーブランドでのこと。店頭での接客の冒頭で、予算の質問がありました。この質問の意図は様々考えられますが、質問の投げかけ方やシチュエーションから買うのか買わないのかを最初の段階で振り分けたいのだということが明らかでした。メンズフロアの売り場で、女性1人の私に即販売できるはずが無いと踏んだのでしょう。しかもブランドの黒タグで安いものではありません。最初の段階では、私の素性をお伝えしていないため、お客様の衣装手配中であることはわからなかったわけです。

それから、私が顧客の衣装手配中であることがわかり、態度が急変。違和感を感じながらも通常店頭に出ない商品をキープできたので、やむなくこのままこの店舗を利用することに決めました。日を変えて、この店舗にお客様をご案内。事前にキープしたはずの商品の把握が十分でなく、お客様をお待たせすることになりました。お客様も経営者ですので、厳しい視点でスタッフの動きやオペレーションを伺っておられます。

結果としては、50万円のジャケットと10万円のシャツを彼らは売りそこなったわけです。その後、専門知識は低くても誠意ある接客の店舗、もう一つは専門性も申し分のない店舗の商品をお客様は購入されました。専門性が無くとも、私共がサポートしていますので問題はありませんが、大事なのは、誠意としっかりとしたオペレーションです。

現場の接客の中で、その会社のマネジメントがどのようなものか、透けて見えるものです。私自身も問題は現場で起こっているという考えのもと、企業のコンサルティングを実施する中で現場調査は大事にしています。冒頭、予算で振り分けようとしたその姿勢。そこにはもう誠意は無いのです。これは、店員一人の課題では無く、店舗運営に様々な問題があると判断します。富裕層の目は厳しく敏感です。多くの富裕層を顧客に持つラグジュアリーブランドは、人材育成やブランドを如何に体現するかをもっともっと大切に扱って欲しいと願うばかりです。